大末建設株式会社

建設事業による社会貢献TCFD提言に基づく気候関連の情報開示

当社は、気候変動を重要な課題と捉え、2023年11月にTCFD提言に賛同するともに、TCFD提言に基づく分析を実施しました。TCFD提言に基づく気候関連情報は下記の通りであり、分析を踏まえた対応策を推進し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に取り組んでいきます。

ガバナンス

社長を委員長として、気候関連を含むサステナビリティ課題の審議・検討を行うサステナビリティ委員会を設置しています。同委員会は年複数回必要に応じて開催され、サステナビリティに関するリスクや機会など重要課題の特定や見直し、施策の審議・検討や実施状況の評価、モニタリングなどを通じ、気候関連課題に対する取り組みを推進しています。サステナビリティ委員会で審議された内容は年1回以上取締役会へ報告され、取締役会では報告内容について審議・決定が行われています。

リスク管理

気候変動関連リスクはサステナビリティ委員会で管理されています。同委員会では気候変動関連リスクを特定し、定性・定量の両面から評価することに加え、対応策の審議・検討を行っています。特定された気候変動関連リスクは、その他のサステナビリティ関連リスクと統合・再評価され、対応状況をモニタリングされています。このうち重大と判断されたリスクは、取締役会へ報告された後、全社的なリスクと統合され管理・監督されます。

戦略

当社では、TCFD提言にて推奨されているシナリオ分析の手法を活用し、2030年の将来世界におけるリスクと機会を特定・評価しています。シナリオ分析では、低炭素社会への移行による影響が顕在化する2℃未満シナリオと、気候変動に伴う物理面での影響が顕在化する4℃シナリオの2つの世界を想定し分析を行いました。また、特定されたリスクと機会に対して、主に表に記載の対応策を検討しています。

想定する世界観 移行リスク/機械の分析に使用 物理リスク/機会の分析に使用

4℃シナリオ

産業革命期から2100年までに約4℃上昇する世界を想定したシナリオ。脱炭素へ向かうことを前提とせず、現行の気候関連政策は成り行きで化石燃料に依存した産業構造が続く世界観を示しています。

●世界エネルギー機関(IEA)
ーStated Polices Scenario(STEPS)
●The2° Investing Initiative
ーLimited Climate Transition Scenario(LCT)
●気候変動に関する政府間パネル
- RCP8.5
- RCP6.0

2℃未満シナリオ

産業革命期から2100年までに気温上昇を約1.5℃に抑える世界を想定したシナリオ。温室効果ガス排出量実質ゼロに向け、現在より厳しい規制等が企業に迫られ、それらにより大気中の温室効果ガスの増加スピードは下降していくという世界観を示しています。

●世界エネルギー機関(IEA)
ーNet Zero Emissions by Scenario(NZE)
ーSustainable Development Scenario(SDS)
●The2°Investing Initiative
ーAmbitious Climate Transition Scenario(ACT)
●気候変動に関する政府間パネル
- RCP2.6
リスク・機会 考察 評価※ 対応策
2℃未満 4℃
リスク 移行 炭素価格
(炭素税)
炭素税導入により事業活動に伴うCO₂排出量に対して課税されるため操業コストが増加する。
  • ハイブリット車の導入など省エネルギー推進
  • 低炭素型コンクリートなどの低炭素技術、製品の開発を検討
  • 建設現場の環境を利用した自家発電設備の研究・開発
リサイクル規制 脱炭素社会へ向け建設リサイクル法の規制強化や、新たなリサイクル規制が導入された場合、その対応コストが発生する。
  • 廃棄物の発生抑制
  • リサイクルの推進
  • 環境負荷の低い植物由来の素材を使用した作業服の導入
原材料/エネルギーコストの変化 脱炭素社会へ向け生産方法や再生可能エネルギーの利用に伴い資材の調達コストが増加、また再生可能エネルギー比率の高まりにより電力コストが増加する。
  • グリーン調達の推進
  • 低炭素型コンクリートなどの低炭素技術、製品の開発を検討
物理 原材料/異常気象の激甚化(台風、豪雨、土砂、高潮等) 異常気象災害の激甚化に伴う拠点の被災により資産の損害や営業停止による損失が発生する。また、現場が被災した場合、作業の遅延や中断が発生し、対応コストが発生する。
  • 定期的な訓練などのBCP対策の実施
原材料/労働・施工条件悪化 気温上昇によるヒートストレスや豪雨などの労働環境の悪化に伴い、建築現場での労働生産性が低下し、工事の遅延や中止、それに伴う対応費用が発生する。
  • 工業化工法やBIM/CIM、ロボット化などの活用による省人化・効率化
機会 移行 原材料/エネルギーコスト/顧客行動の変化 既存施設のエネルギー高効率化へ向けたリニューアル工事や再生可能エネルギー・省エネルギー需要の増加に伴い関連工事(建物の長寿命化、ZEB、ZEH)の売上が増加する。
  • リファイニング建築などの既存建物の長寿命化
  • ZEB、ZEHなどの環境関連技術、製品の開発
  • 低炭素型コンクリートなどの低炭素技術、製品の開発を検討 
物理 異常気象の激甚化(台風、豪雨、土砂、高潮等) 異常気象災害の増加により国土強靭化のための防災、減災工事の受注や災害後の復旧工事の受注が増加する。
  • 土木事業への進出による受注機会の増加
平均気温の上昇 空調効率化の需要拡大によるリニューアル工事の需要が拡大する。
  • リニューアル分野の取り組み推進および営業活動強化
立地優位性低下
(災害増加に起因)
より立地条件のよい土地への工場や物流拠点の分散に伴い、受注機会が増加し売上が増加する。
  • 非住宅分野(工場・物流倉庫)への取組み推進および営業活動強化

※評価:財務的影響について、大:5千万円以上、中:1千万円以上〜5千万円未満、小:1千万円未満としている。

指標と目標

当社では温室効果ガス(GHG)の排出量を指標とし、Scope1・2について、2021年を基準に2030年度までに31.0%削減することを目標としています。2021年度のCO₂排出量は、Scope1(事業による直接排出)が4,221.9t-CO₂、Scope2(電力消費による間接排出)が884.2t-CO₂の合計5,106.1t-CO₂でした。目標達成に向け、省エネルギー化を中心として取り組みを促進しています。また、サプライチェーン全体でのCO₂排出も重要視しており算定を進めています。2021年度のScope3は718,705.2t-CO₂であり、サプライチェーン全体でのCO₂削減に向け、低炭素型コンクリートなどの低炭素技術・製品の開発を検討など今後さらに取り組みを強化してまいります。

項目 対象 2021年度実績(基準年) 目標 2022年度実績 2023年度実績
GHG排出量 Scope 1・2 5,106.1t‐CO₂ 2030年度までに2021年度比で31.0%削減 6,420.7 t-CO₂ 5,970.7 t-CO₂
Scope 3 718,705.2t‐CO₂ 952,963.9 t-CO₂ 877,405.9 t-CO₂